ネコとコーラと国語と私

私立高校勤務の国語教師が感じた教育に関するあれこれ。あとたまにネコとかコーラとか。ブログ毎日更新中。

学校の図書室を「電子図書室」化するにあたってのメリットとデメリット

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最近、学校独自で運営するタイプの電子図書館サービスに非常に興味があります。

サービスそのものが日本ではまだまだ発展途上ということもあり、高校単位で導入している事例が少なすぎるため今ひとつ運用のイメージがつかないのですが、うまく軌道に乗ればかなり便利だと思うんですよね。

むしろ時代の流れを考えれば、これから先絶対に「来る」システムなのは確実なので、ここらで一つ広報の目玉とするために機先を制しておくのもアリでしょう。私立ならではのフットワークの軽さを是非とも生かしたいところです。

 

【目次】

 

 

導入のメリット

 

いつでも、どこでも借りられる

 

何といっても、場所や時間に拘束されない生徒の読書活動を支援することができるというのは大きな強み。

勤務校は、教室のある棟と図書室のある棟が別であり、「移動だけで休み時間が終わってしまい図書室へ足を運べない」という生徒の不平不満が毎年のように出されるのが現状です。そんな中、わざわざ図書室に足を運ばずに図書の貸し出しができる、というメリットはとてつもなく大きい。しかも365日24時間対応可能。

生徒には「本を借りに行け」と言いながら、生徒に面倒な授業準備や移動教室やらの雑多な活動を要求して休み時間を拘束していくスタイル。そんな根本からとんでもない矛盾を抱えているこの現状に、バッサリとメスを入れるには丁度良い得物だと思うのです。

 

 

司書の負担軽減

 

貸出期限を過ぎれば勝手に返却(=その書籍データを閲覧できる権限が消失)されるため、「なかなかあの生徒が返却してくれない」「そもそもあの本はどこへ?」といった事態を防ぐことができるのも大きな魅力。もちろん、破損や紛失の恐れもないため、ブックカバーを付けたり破損個所を定期確認したりといった細々とした業務を無くすことができ、その分導入書籍の精選などのより本質的な業務に力を入れることができるようになります。

バーコードによる書籍管理システムは図書館における一つの革命だったはずですが、図書館そのものの電子化は図書館の在り方を更に一歩先へと進めるための大きな革命となるはずです。

 

 

蔵書によるスペース圧迫からの解放

 

本はどうしても場所を取りますが、情報の電子化はそうした物理的拘束から人間を解放する方向へと作用しており、私たちを取り巻く情報の保存法は随分と大きく変わってきました。現代においては、もはや物理的な本など必要なくなってしまったわけです。

 

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ただ、大前提として一人一台の端末を確保しなければならないという大きな壁があるわけですが、幸いにして勤務校では全員にタブレットを配っているのでその点はクリアしています。いや、活字のみであればスマホサイズでも十分閲覧に耐えうる、ということは電子書籍に親しんでいる方は既にお分かりのことでしょう。となれば、一人一台スマホを持っているこのご時世、わざわざ重たい本を持ち歩かなくても済むというのは非常に大きなメリットであると言えます。

 

 

と言った感じでメリットのオンパレード。

むしろこれはやらない理由を探す方が難しいのではないだろうか。

 

 

導入のデメリット

 

とはいえ、メリットばかりではありません。もしそうであるならば、そもそも一切悩むことなくとっくにゴリ押ししているところです。

 

 

あくまで「電子」書籍である

 

そもそも「紙」と「電子」では読書体験そのものの質が変容してしまう。少なくとも私はそう感じています。記載された情報を脳にスキャニングするという点では同じわけですが、そのメカニズムというか、効率というか、ともかくそんな感じの何か形容しがたい微妙な部分での差異は確実に存在します。

 

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紙の書籍を読むようにはいかないので、読書指導をする際には少し注意が必要になると思います。電子書籍や電子辞書がいまだに抵抗感を持たれている理由もこうしたところにあるのでしょう。

 

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いつでも読めるが故の注意力散漫

 

タブレット端末を授業で使わせる際に必ずと言ってよいほど出るのは「生徒が遊んだらどうするんだ」という意見。この意見に対する答えとしては非常にシンプルで、「それはあなたの使わせ方(指導の仕方)が悪いから工夫しましょう」ということなのだけれども、確かにそうした不安を抱くのはごもっとも。

授業中の「関係ない本をこっそり読む」はもはや学校のお決まりであり、教科書の裏にこっそりと忍ばせたり、机の引き出しにこっそりと仕舞い込んだりと、生徒はあの手この手で自分の読みたい本を授業中に読もうとする。ただ、それらの古典的手法であれば教師側がそれを看破するのは割と容易であるのに対し、タブレット上での閲覧ともなるとなかなかにそれは難しくなってしまう。

いや、まぁ何度も言うように指導の仕方の問題であるし、それは何も読書に限った話ではないので、だからといって電子図書館導入の反対理由には成り得ないわけですが。

そもそも、大人だって勤務中にパソコン使って仕事とは関係ない余計なことしてる人いますよね?

 

 

費用がかかる

 

ここが実現に向けた上での目下の最難関でしょうか。

導入時のコストはもちろん、ランニングコストについても考えていかねばならないわけで、何事もお金が無ければ大がかりなことはできません。地獄の沙汰も何とやらです。こればっかりは個人の一存ではどうにもならないわけで、組織のお金を巻き込んだ大立ち回りが必要になってきます。

 

 

現状の把握と今後の展望

 

ということで、導入のメリットは確実に有り、大いなる可能性を感じさせるサービスだと思うのですが、トータルで考えると費用対効果が不明瞭であるということが導入を足踏みさせる一番のネックとなるのでしょうか。

とりあえずやってみました、で失敗したら目も当てられないため、まずは生徒に青空文庫とかの無料で読めるものをいくつか電子端末上で読ませて、アンケート調査を取るなどの手順を踏みながら慎重に進めていくのがいいのでしょうか。

いや、むしろ大人側の理解を得る方が難しいのかもしれません。まずはそちらの根回しからかなぁ。kindleとかの電子書籍サービスの便利さを布教して、心理的ハードルを下げるのが手っ取り早い気がします。

 

ともあれ、ちょいと導入できないかどうか奮闘してみたいところです。

進展などあればまたこのブログで書き連ねていきたいと思います。