ネコとコーラと国語と私

私立高校勤務の国語教師が感じた教育に関するあれこれ。あとたまにネコとかコーラとか。ブログ毎日更新中。

学校現場におけるグループウェア(「slack」「Teams」等)導入のメリットと、それを利用した勉強会のススメ

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【目次】

 

 

 

「校内グループウェア」の導入・活用は、働き方改革の効果的な一手となりうる

 

現在、勤務校ではMicrosoft社の提供する「Teams」というグループウェアを導入しています。これはいわゆる「仕事用のLINE」であり(暴論)、複数人でグループを作り、チャットによるコミュニケーションを可能とするサービスです。

 

有名な同種のサービスに「Slack」というものがあるのですが、かつて「学校で『Slack』を導入したい」と画策していた私としては、現在の環境は願ったりかなったりといったところ。

たまに、かゆいところに手が届かないのはご愛嬌。概ね満足のいくサービスです。

 

www.yasuteru24.com

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利点① 全体での共有が一瞬でできる

 

導入におけるメリットについては「Slack」の方の記事にあれこれと書いたのですが、なんといっても「共有の速さ」は特筆ものでしょう。

 

学校現場はとにかく不思議なもので、部署毎にきちっと人事配置がなされ、誰がどの業務に携わっているのかが明らかである一般的な企業とは異なり、あらゆる分掌(校内業務)が学年や学科、教科などの垣根をまたいで複雑に絡み合っているため、なかなか指示系統が一本化できないという難しさがあります。

そんなわけだから、時には各部署における会議時間がダブルブッキングしていたりするわけで、ここに部活動引率などが加わるとその複雑さは更に混迷を増していくことになります。そんな状態では全体での周知徹底など夢のまた夢。

 

だったのですが、携帯電話の登場が現代社会における「擦れ違いによる時間のロス」を根絶したかのように、グループウェアを導入・活用することで「大人数が入り組んだ職場での連絡漏れ」を格段に減らすことができるようになります。

勤務校でも割と最近まで、全ての連絡事項を紙媒体、あるいは口頭で行ってきたわけですが、それはもう不便なものでした。紙はすぐ無くなるわ、口頭連絡では伝言ゲームや「言った・言わない」の不毛な争いが繰り広げられるわで、共有にかかる労力はそれはもう甚大なものがありました。

ネットの発達と特化サービスの登場が、そうした無駄の極みである状況に終止符を打ってくれたのは非常に喜ばしいところ。

 

 

利点② 人間が移動する必要が無くなる

 

また、それに伴って毎朝実施していた職員朝礼の開催が半分以下になりました。

朝礼ではあらゆる伝達事項がメインだったわけで、いちいち集まらずとも情報の共有が可能となった今、それが無くなるのは必然というもの。

物質の「移動」には膨大なエネルギーを消費しますが、インターネットの登場はそうした「移動」に革命をもたらしました。必要なのは「情報」なのであって、人間そのものが移動せずに情報が手に入るようであれば、それはかなりのエネルギーの節約へと繋がります。

 

さらに、これらのサービスの大きなメリットは、端末さえあればいつでも・どこでもアクセスが可能である、という点。

極端な話、スマホ用のアプリをダウンロードすれば休日に自宅にいても情報の共有が可能となります。ふとした瞬間の、「あれ、○○はいつまでにすればいいんだっけ?」とか、「○○の案件はどこまで進んでいるのかなぁ」を、自宅のベッドでゴロゴロしながら確認ができる。これほどに便利なことはない。

 

 

懸念① 情報漏洩のリスク

 

もちろん、そこに来ると「情報セキュリティ」の問題が出てくるので、「本当に流出してはいけない情報はそこで流さない」といったような、各々のセキュリティ意識を高める必要は確実にあります。

ただ、漏洩のリスクは恐ろしいため慎重を期す必要は確実にあるのですが、一方でそれが行き過ぎることで便利さが台無しになっては勿体ないというものです。そもそもこのご時世に、情報の一切を持ち出し禁止にする方が不自然な気もします。

生徒の使用するスマホ・タブレット端末に極端な使用制限をかけてしまうよりも、いかに有効活用するのかを考えた方が絶対に大事であることと同じように、思考のデフォルトを「使わせない」から「いかに使わせるのか」へと切り替えるタイミングが、まさに今なのだと思います。

 

 

懸念② 「どこでも仕事場」化

 

また、それほどまでにアクセシビリティが高いがゆえに、「職場と自宅」いわゆる公私の境界を曖昧にしてしまうのでは、という懸念があるのもまた事実。

これについては携帯電話がまさに好例で、携帯電話は極論「世界中どこにいても逃げられない」状況を生み出した大戦犯だと個人的には考えています(単純に、私が電話嫌いである、ということもあるのですが)。

「いつでも」「どこでも」のメリットは、裏を返せばそうした「逃げ場無し」の状況を生み出しかねないほどの恐ろしさを秘めているわけで、運用を誤れば「働き方改革」を逆行させてしまうことにもなりかねません。

これに関しては各種サービスに備わっているオプションで「通知オフ」の設定をするなどの対策が考えられます。実際「Teams」では、チャネル(会話グループ)毎に、「時間帯」と「曜日」の通知設定を個別に行えるようになっています。それらを組み合わせれば、プライベートな時間を邪魔されずに運用することが可能となり、オンとオフの切り替えもしやすくなるよう設計されています。

ただ、根本的にはやはり「○○時以降は使用しない」などの使用者同士での共通ルールを設定することが最も手っ取り早い解決策となるのは言うまでもありません。

 

 

校内での「勉強会」に改革を

 

こんな感じでとても便利なグループウェアなわけですが、最近目論んでいるのは、このサービスを活用しての「『勉強会』のオンライン化」です。

 

 

実施に関わるあらゆるハードルを飛び越える(空間の跳躍)

 

従来の勉強会の実施には、以下のようなハードルがありました。

 

①、全員が一堂に会する必要がある(場所の制約)

②、全員の予定を揃えなければならない(時間の制約)

③、学校現場の多忙化が①と②の困難さに拍車をかける

④、そもそも有志を募るのに手間がかかる

 

勉強会のメイン会場をオンライン上に移すことができれば、この全てをクリアすることができるわけで、それはもう大いに活用していきたいところです。

「いつでも」「どこでも」「誰にでも」のもたらすメリットは相当に大きいものがあります。

 

 

「ストーリー」が時を超えて再生される(時間の跳躍)

 

また、「あらゆるやりとりがそのまま保存される」という部分も、今すぐには実感できずとも相当大きいメリットです。

 

年度が替わって新任者が入ってきた時には、まずは自校独自の文化やガラパゴス化された業務の理念・手法について研修係が中心となって教えてあげなければならないわけですが、これらのやり取りをログで残しておけば、そのログを読んでもらうだけでも相当な研修の手間が省けるはずです。(もちろん、それで全てを済ませようなどという横着は禁止。文字情報で全てが伝わるのならば「対話」なんてあっという間に絶滅しています。これらのコミュニケーションに、上位・下位の区分は存在しません)

 

それ以外にも、部署移動や配置換えなどで新たにその仕事に携わる人間にとっては、「誰が作ったのかよく分からんマニュアル」よりも(場合によってはマニュアルや引き継ぎ書すら存在しない業務も存在する。絶句)、「当事者同士でのやり取りの記録」の方が遥かに役に立つ場合の方が多いはずです。

大抵の仕事は当事者相互の織り成す「ストーリー」によってその性質が決定づけられています(逆に言えば、そうした人間味の無い仕事はとっととAIに駆逐されてしまえばいい)。そうしたストーリーを文脈ごと保存できるというのは、結構画期的なことだと思うのです。少なくとも私は、「この業務は、一体誰が、何のために始めたのか、誰か教えてくれ」と心の中で叫んだのは一度や二度では済みません。

 

 

もちろん、「リアル」の対話も忘れずに

 

このように、ネット上のやり取りが便利・気楽である反面、やはりこれらのコミュニケーションを「真正」のものとするためには、面と向かってのリアルなやり取りは不可欠です。

どんなに便利であるからといって、ネット上では相手の機微を正確に掴みとることはできません。そうした部分ではリアルでの対話に軍配が上がるところであり、話し合う内容によってオンラインかオフラインかを適切に設定するようにしなければなりません。

 

 

あとはどう持っていくかの勝負

 

そんな感じでお膳立ては揃っています。

あとは、周囲の人々をお誘いする私自身の技量(と信頼度)が試されるところです。うーん、これが最大の難関かも分からんね。

中島君よろしく、いきなり「『Teams』で勉強会しようぜ~」と投げかけても、ホイホイと誘いに乗ってくれるカツオ君はそう簡単には存在しません。かと言って、全員と親友のような親密な関係を築くのは、コミュニケーション下手な私には結構ハードルが高いところ。

こちらにできるのは、いかにこれらのサービスが便利であるのか、といったことや、いかにして効率よく・大きな効果を上げることができるのか、といったことを訴え続けることになるのでしょうか。

 

 

少し弁明をしておくと、別に自分が中心となって目立ちたいのでは決してありません。目的はそんな俗なところにあるわけではありませんが、下手を打つとそう解釈されてもおかしくない空気感も地味に感じるので、そこは慎重に動く必要がありそうです。たとえ自己顕示欲や承認欲求が満たされたとしても、それが生徒のためにならなければそんなちっぽけなプライドには全く意味がありません。

むしろ、他の誰かがやっていたら秒で乗っかっているところです。が、現状それも無い以上、自分が頑張るしかありません。

 

これまではネット上で情報を公開してくれている方々の元へ近づいて行っていたのですが、最近になって、やはり今は自分の生きる範囲での足元をしっかりと固めていく時期なのかなと考え始めました。蓄えた知識をそこで生かせるのであれば、これまでのブログ運営で培った知識や多くの方との繋がりも無駄ではないはずです。

というわけで、もうしばらくはブログ更新よりも勤務校の改善の方に力を入れていきたいなぁと思うところです。不定期更新は続きます。