職場をどのように変えていくか
10年近く同じ職場に居続ければ、嫌でも不満点およびそれに対する改善策めいたものは見えてくる。
学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―
- 作者: 工藤勇一
- 出版社/メーカー: 時事通信社
- 発売日: 2018/12/01
- メディア: 単行本
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しかし、しがない平教員には職場全体を変える権力はなく、できることと言えば周囲を挑発することぐらい。
例えば、学校改革に関する本を読んだ後、それをわざとらしく机上に置いてみたり、研修などで積極的に自分の取り組みを周知してみたり、ブログを書いてみたり。その程度。
かと言って、誰か一人の理念や業務の手法を押し付けることには何の意味もないだろう。そんなのは改革でも何でもない。
原理も効果も不明な得体の知れないことを無理やりやらされることほど、人間のパフォーマンスを低下させるものは無い。
これは生徒と一緒である。それをすることのメリットに気付かせなければ効率は上がらない。
理想的なのは、周囲を巻き込み、賛同者を増やした上で数の暴力を叩き込むこと。
ボトムアップでの改革が最も穏便に事を進められるはず。そう信じてここまで頑張ってきた。
そして今、なかなかにいい感じの追い風が吹いている気がする。
好機逃すべからず。今まで一人で温め続けてきた卵。そろそろ孵化させるべき時なのでは?
と、いうことで、今更ながら職場でSlackを導入できればいいなぁと考え、あれこれと画策中。
はてさてどうなることやら。
そもそもSlackとは
現代の日本では、誰が説明してもこれ以上的確かつ分かりやすい説明は無いだろう。
「仕事用に特化されたLINEみたいなもん」
それに尽きる。
公式サイト
ios
android
なにはともあれ、まずは実際に触れてみるのが手っ取り早い。
導入を提案する10の理由
さて、この度学校現場に導入したいと考えるに至った理由は以下の通り。
一種の「学校(職場)あるある」的な、普遍的な内容だと思うのだが、いかがだろう?
※思いのほか長くなってしまいました。面倒な人はせめて各項目の見出しだけでも読んでいただければ幸いです。
①業務内容の「見える化」の推進
なんと言ってもまずはこれ。
「人類史上最も偉大な発明」の筆頭候補である「文字」。
普遍性・伝達性その他諸々、抜群のコストパフォーマンスを誇る頼もしい奴である。
Slackの導入により、「業務の内容そのもの」はもちろん、合意から実行、果てには失敗から改善に至るまでの「物語」を文字で残すことができる。
そして、それをいつでもどこでも閲覧できる。こんな素晴らしいことってないだろう。
これによって各々の業務の透明性を確保できる。言った、言わないみたいな泥沼化も無くなる。
②意見を出しやすい
勤務校における現在の職員会議は、「会議」と言うよりは「報告会」。多分、この状況は話を聞く限りはどこの現場も同じはずである。
そもそも机配置も典型的な記者会見スタイルな為、「管理職 vs その他教員」みたいな雰囲気があり、議論になりにくい。若手教員などは発言すらできやしない。
そんな現状もあるため、実は現在、有志を募ってLINE上でオンライン会議的なことをしているのだが、これがまぁ意見が出る出る。やはりみんな思ってはいるけれども、発言できていないだけなのだなと実感する。
声なき声に力を。Slackの導入は、埋もれていた有意義な意見を拾い上げるのに一役買ってくれるはずなのだ。
※実際私もこのブログ上では結構ボロクソ言っているけれど、実際の会議の場でここまで言えるかと聞かれれば、それは多分無理だろう。典型的なネット弁慶なのである。
③業務引き継ぎの正常化
私立学校は転勤がないという特殊な環境のため、「業務の引き継ぎ」という意識が非常に希薄であるように感じる。
「分からなくても前任者がいるから、その人に聞けば何とかなるかぁ」的な空気感が漂っており、引き継ぎのし方も杜撰である。
結果、長年行っている業務であっても、ほとんど洗練化が進んでいない。
実態は積み木をただ寄せ集め、並べ替えているだけであって、それがまったく積み上がらない状況になっている。
ノウハウはどんどん積み上げていかなければ洗練されないというのに……。
ここらで一度、各自の中に「経験」という形でブラックボックス化している業務の理念や手順を体系化し、定期的に外に出してもらう必要がある。
ここでもやはり「見える化」が効力を発揮するはずだ。
④連帯感の促進
勤務校は単科ではなく複数の学科で構成された学校であるため、どうしても学科間でのコミュニケーションが希薄になりがちである。これは一般企業の部署連携においても似たり寄ったりだろう。
願わくば、全部署を貫く1本通った芯が欲しい。それが「学校(会社)」という一つの生物としての力を発揮する時に不可欠なのだ。
かと言って、この職場はそれなりに巨大な組織で人員も3桁いるので、面と向かってのコミュニケーションでは全員への周知徹底はほぼ不可能に近い。
「全員」に「平等」に意見を発信するツールが必要だ。
⑤報告の簡略化
「その都度提出を余儀なくされる報告書」。
紙文化における最大の嫌われ者はコイツではなかろうか。
なぜ報告内容をパソコン上で作成したというのに、それを紙で出力しなければならないのか。
そしてなぜ、わざわざ上司のもとへ行き、印を押してもらわねばならないのか。
何人もの人間に同じ説明を何度もしなければならない時間のもったいなさよ。
非効率極まりない作業が日本には根強く残っている。
報告をしに上司のところを訪ねる→不在→デスクに帰る→機会をうかがって再チャレンジ。
この作業のなんと無駄なことか。タイミングが合わない日には、一日のうち結構な時間がこの無駄な往復に費やされることもある。
わざわざ面と向かうなら口頭だけでいいじゃん。
紙で出力するなら、机上に置いておくだけでいいじゃん。
いや、むしろ、ネットワークで繋がっているのだから、データ送ればいいじゃん。
そう思い続けて何年が経っただろうか……。
日本は早くハンコ文化から脱却すべきだ。今の時代においては弊害の方が多すぎる。正直誰も得をしないシステムだと思っている。
とっとと報告を集約するチャンネルでも作って、そこにあらゆる部署の報告内容を集約すべきである。
⑥細分化された業務に柔軟に対応可能
どの企業もそうなのだろうが、学校現場における各種業務も中々の多様性を誇っている。
「学校」という大きな箱の中には、学科・教科・学年・各種分掌(係)・部活……等々あらゆるカテゴリが存在しており、細分化すればキリがない。
そして、それぞれの業務が同時進行的に複雑に絡み合いながら行われるため、全体像の把握はほぼ不可能である。
それゆえの連絡漏れや連携不足が日常的に起こっているのが実情だ。
Slackは、それら全ての「見える化」に貢献する。
⑦動作が軽い
これは大事。もっさりしたUI(ユーザ インタフェース)は地味にストレスが溜まる。現在いくつかの校務支援サービスを使ってはいるものの、快適とは言い難い。
「業務効率化のために導入されたシステムのためにストレスを抱える」なんてのは本末転倒も甚だしい。
その点Slackはサクサク動き、必要な項目へ素早くアクセスできるよう機能が洗練されている。
「痒いところに手が届く」。毎日使うものだからこそ、これはほんと大事。
また、あらゆるサービスとの連携も充実しており、拡張性が高いのもポイント高し。
⑧仕事に特化しており、いつでも確認できる
現在LINE上で業務連絡をしている部署は多い。
しかし、LINEはプライペートで使うのが主な使い方であるため、なるべくなら仕事とごっちゃにしたくない。そんな人も多いはずだ。
機能も日常的なコミュニケーションに寄っているため、やはり業務で使うとなると仕事に特化されて開発されたSlackに軍配が上がる。
⑨有志たちで手軽にネット上研修(勉強会)ができる
教員は授業の時間帯もバラバラだし、放課後には部活指導などがあるため、一斉に時間を共有できる機会が皆無に等しい。
勉強会をしたくとも、「時間がない」の一言に尽きる。
Slackを使えば、全員が一堂に会する必要はない。意見交換会などはもちろん、「読書会」みたいなこともできるはずだ。
⑩データベース作成のための叩き台になる
クラス運営の手法や授業のノウハウなどは教員の個性が強く出る分、共有を図ることが難しいという側面を持っている。
元々教員の仕事というものが、そうした「共有知」のようなものを創出するのに向いていないということもあるのだろうが、それでも大まかな部分でのノウハウは「共有・蓄積」が必要だろう。手品の種ではないのだから、もっと積極的にオープンソース化するべきなのだ。
とは言うものの、上述のように「肝心の共有を図る時間が作れない」というジレンマを抱えている。多忙ゆえの悲劇。とにかく時間がないのである。
新人の離職問題も、勤務校では深刻な問題となっている。
しかし、何度も言うが「時間がない」。新人の教育もままならない訳であるが、この状況ははっきりいっておかしい。そりゃ新人も離れていくよ。
そこで、「困った時にはこれを見れば良い」的な一種のデータベースがあれば、新人研修の手間も省けるし、何なら中堅以上の教員にも大いに刺激を与えるはずだ。
社内wikiならぬ、校内wikiみたいなものができればそれが理想だろう。
いきなりそれはハードルが高すぎるので、まずはとっつきやすそうな部分から行こう。そういうわけである。
言うは易し、行うは難し?
新しいことを始めるには結構なエネルギーを使う。
だからこそ、焦らず、じっくりと。それが大事。急いては事を仕損じるというもの。
先行の成功事例をみるとかなり勇気づけられる。是非とも実現したいところ。
こちらの実践例は理想的。まさにこういうことをしたかった。
「学校」という現場ではこんな事例も。
こちらは「クラス運営」にSlackを導入した例。今やすっかり有名なN高校。
Slack以外にも、Trelloの導入や活用も是非とも推進したいところ。それ以外にも導入したいサービスを上げればキリが無い。
ともあれ、教員は一刻も早く「ICTは知的生産性を高めるツールである」ということに気づかなければならない。
でなければ、タブレットを持った生徒の指導なんかできやしないだろう。
このことに多くの教員が気づくことが、ひいてはICTを利用した教育の推進に必ずや直結するはず。そのためにも、是非ともSlackを導入したい。
とまぁ、こんなわけです。
すごく長くなってしまったなこれは。果たして最後まで読んでもらえたのだろうか……。
と、いうことでしばらくは根回しやらなんやらいろいろと頑張ってみたいと思います。
経過については、このブログにて報告できればなと考えています。
【追記】実際に勤務校ではマイクロソフト社の「Teams」というサービスを導入することになりました。詳しくは以下の記事にて。