ネコとコーラと国語と私

私立高校勤務の国語教師が感じた教育に関するあれこれ。あとたまにネコとかコーラとか。ブログ毎日更新中。

力を抜きながらも良質な知識を得られる本の素晴らしさ。『サラリーマン大喜利』『ヘンテコノミクス』

 

【目次】

 

 

久々にのんびりできる一日だったので、思う存分にのんびりダラダラとしてみました。

 

沢山の本を買うだけ買って放置しているので、なるべくならこの連休期間に消化したいところ。が、疲労も蓄積しており、今日はあまり小難しい内容の活字を読む気分ではなかったので、少し肩の力を抜いて読める本を読むことに。

 

 

『仕事のストレスが笑いに変わる! サラリーマン大喜利』

 

本日読んだのは、『仕事のストレスが笑いに変わる! サラリーマン大喜利』という本。

 

仕事のストレスが笑いに変わる!  サラリーマン大喜利

仕事のストレスが笑いに変わる! サラリーマン大喜利

 

 

『夢をかなえるゾウ』の作者である水野敬也と、「キングオブコント」の王者である「かもめんたる」岩崎う大という異色のコラボレーション。

 

「上司の飲みの誘いを上手く断ってください」
「イジワルな先輩と同じ職場で働くことになりました。対処法を教えてください」
「大切な会議の日に遅刻してしまいました。許してもらってください」

 

などと言った、ビジネスマンの抱える悩みに対し、岩崎が見開き2ページほどの大喜利でボケ倒した後に、水野が見開き1ページのコラムで歴史上の偉人の逸話で補足するという構成。

ビジネスシーンにおける34個のお悩みに対しての、岩崎う大の大喜利がまた秀逸で腹を抱えて笑いっぱなしでした。やはりお笑い芸人とは知のスペシャリストなのだなと感心しきり。頭が良くなければ(ペーパーテストでの点数の良し悪しの話では無い)これほどの発想は為しえないでしょう。

本人によって書かれた、緩さ全開の何とも言えぬイラストもいい感じで脱力感を演出しています。

 

www.yasuteru24.com

 

大喜利でひとしきり笑わせた後には、現代のビジネスシーンにも転用可能な逸話を展開することで、弛緩した読者の意識をきっちりと締めるという隙の無さ。緊張と緩和のバランスが非常によく、退屈することなくあっという間に読み進めることができました。

 

 

教育における「適度なユーモア」の重要さ

 

マンガで敷居を下げた後に、活字によって専門的な補足を行うというスタイルは個人的にとても大好きです。幼少からの漫画体験によって、「マンガによって学ぶ」ということに抵抗が一切なく、自身の持つ教育哲学との親和性が高いというのが大きな理由でしょう。

日々の授業においても、最初から最後まで堅い話をするよりは、適度にユーモアを交えた方が、生徒たちの食いつき方や理解度は桁違いに良くなります。もっと教育の現場は緩さを許容すべきだと常々感じるところです。(ただし、終始ゆるゆるのままだと逆効果なのは言うまでもありません。このバランスのとり方が非常に難しい。)

 

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『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』

 

そうしたコンセプトに基づいて書かれた書籍で、最近特に面白かったのは次の本。

 

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

 

 

この本でもやはり、「行動経済学」という分野について、「マンガによる実例紹介→活字による専門的用語を織り交ぜた補足」という構成を取っています。

「経済分野において、人間は必ずしも合理的な行動をとるわけではなく、そこには論理的に考えてヘンテコな現象が発生している」という、人間心理に基づく経済学の深奥について分かりやすく解説されているわけですが、この手の心理学は、知っておいて損はないはずです。

 

報酬があるからこそ、やる気を失ってしまう

関係が無いことなのに、そこに関連を見出してしまう

同じ値段なのに、広告の表現一つで売り上げが変ってしまう

ペナルティを課したことが、逆に罪の意識を消滅させる

同一の数値であっても、入手方法によってモノの価値は変動する

全く同じ商品でも、基準となる情報が変わるだけで価値基準の判断が左右される

「無料」が冷静な判断を狂わせる

自分との距離が遠いほど、二者の差異を感じ取る感度が低下する

 

 などといった数多くの事例がマンガとともに示されますが、これは何も経済に限った話では無く、日常のあらゆる場面において当てはめることが可能である「不可思議」なケースであると言えます。

教育現場においても、「理に適わぬ言動」は散見されるわけであり、そうした現象を正確に捉え、適切に対処する上でこうした「行動経済学」のような知見は、直接的ではないにせよ、必ずどこかで役に立ちます。

理論に基づく経済学の哲学と、必ずしも理に適うわけではない人間心理の天邪鬼さ、そしてその両者を止揚させた「行動経済学」の理念。「計算通りに物事は決着しない」という奥深さは、単純に、読んでいて知的好奇心を満たされる内容になっています。

 

 

あくまで初学者の「入門」のお供として

 

こうした専門的な知見を体系的に網羅しつつ、初学者に対していかに分かりやすく知見を下ろしていくのかということを主眼に置いた本は、ただ活字のみで構成された専門書や新書よりも、圧倒的に理解しやすく、書かれる内容が無理なく頭に入ってきます。入門書としてはうってつけでしょう。

 

ただし、こうしたスタイルの書籍で補える知識は、あくまでも「浅く広く」であるわけで、本格的にその分野を突き詰めていきたいのであればじっくりと腰を据えて重厚な専門書を読んでいく他ありません。あくまでも、初学者や門外漢向けだと認識しておく必要があります。

 

教育者としてはもっと専門的な書籍を読み漁らねばならないと常々感じているのですが、教育のことばかりを特化して詰め込むと、先鋭化を招き、応用がききづらくなるのもまた確か。授業をより一段階レベルアップするためにも、たまにはこうした本で専門外のことを吸収していくのもいいのかもしれません。