ネコとコーラと国語と私

私立高校勤務の国語教師が感じた教育に関するあれこれ。あとたまにネコとかコーラとか。

『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』を読んで ――「成功者」ではなく「挑戦者」の育成を

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kindle unlimitedにて1月限定で無料公開されていた『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』(田中修治)を読了しました。

 

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

 

 

正直最初は表紙や帯の紹介文を見て、「なんだか胡散臭い本だなぁ」と思っていたのですが、最初の数ページでグイグイと引き込まれてしまい、あっという間に読み終わりました。

 

「絶対に倒産する」と言われた眼鏡チェーン店「オンデーズ」を買収し、数々の改革を通じて再建していく若き社長の奮闘記。

多少の脚色を感じさせる場面はあったものの、それが気にならない勢いと熱さでした。

「眼鏡屋」と「学校」。業種は全く違いますが、同じく「改革」を志す身としては、非常に勇気づけられる内容が多かったです。

 

「成功」の心地よさの裏に……

 

ただ、こう言う「サクセスストーリー」を読んでいつも感じるのは、「みんながみんなこんな都合よくはいかないだろうなぁ」という何ともネガティブな感想。

これは「成功者」としての地位を勝ち取った人が逆算して書いている文章であり、こうした成功談を語ることなく途中退場していった人間は枚挙に暇がない、というのが現実の厳しさです。

 

私たちは、ともすれば「成功者」にばかり注目してしまいがちです。

実際に教育の現場においても、歴史上の偉人に始まり、教員や卒業生などの「成功談」を引き合いに出す機会がとても多いです。「名言」と呼ばれる言葉たちも、そのほとんどは成功者によって発せられたものです。

そんな成功者のエピソードは、それこそ麻薬のように強い中毒を引きおこし、私たちを魅了します。そして深みに入り込んでいった結果、「なんだかいけそうな気がする!」と正常な判断力を失わせてしまうということもまま起こります。

 

挑戦と楽観は全く非なるもの。

前者にはしっかりとした現状認識と、それに基づいた強かな計算と、「やるからには何が何でも成功させる」という“覚悟”があるが、後者にはそれが不足しています。

 

「失敗を許容する」という考え方

 

「チャレンジだ!」と生徒たちを鼓舞するのはとても簡単で、実際にそのおかげで成功を収めた生徒を見るのはとても心地が良いし、嬉しくなります。正に「教師冥利に尽きる」といったところ。

そんなわけで、もちろん私も一教師として、未来を担う高校生には是非とも挑戦することの大切さを伝え続けたい。

 

でも、「石橋は鉄筋でガチガチに舗装してから渡る」がモットーである超慎重派の私は、どうしてもその一方で「やってみたけどダメでした……」と肩を落として自信喪失してしまっている生徒の顔を思い出してしまうのです。

 

「成功と失敗は、時として紙一重」。

これを生徒に伝えるのもやっぱり教師の務めなのではないかと思うのです。

  

そうした上で教育に本当に必要なのは、「安心して失敗できる環境」を作ってあげること。

それはつまり、「成功者」を育てるのではなく、「挑戦者」を育てるということに繋がります。

 

失敗とは単なる一つの経験であり、決して人生の負け犬になり下がることではありません。

今まで以上に「正解」が見えなくなってしまっている現代社会。そこでは、失敗から速やかに立ち上がる術や、失敗の経験から次の挑戦に向けた教訓を学びとる術などを我々は教えていかなければならないのでしょう。

 

成功を掴み取るために必要なことは、「失敗することを恐れずに果敢に立ち向かい、転んだって何度だって立ち上がり、ひたすら前に進んでいくこと」です。

 

 

この小説で描かれるのは、まさに「フェニックス」のように何度も逆境から立ち上がった一人の男の、「挑戦と失敗と失敗、そしてその末にようやく掴んだ成功」の物語でした。

何はともあれ、様々な気づきと、大きな勇気をもらえる一冊でした。