ネコとコーラと国語と私

私立高校勤務の国語教師が感じた教育に関するあれこれ。あとたまにネコとかコーラとか。ブログ毎日更新中。

「インクルーシブ教育」に関する講演を聞いての覚え書き

本日は勤務校に大学教授をお招きしての職員研修。

本題は「インクルーシブな高校」の在り方について。ただ、それに限らず、印象的な内容があったため個人的なメモを整理がてらまとめておきたいと思う。

 

【目次】

 

 

①生徒を「対象」ではなく「主体」として考える

 

こうした考え方は最近では珍しくなくなってきたが、それでもやはり我々は生徒を「対象」として捉えてしまう。指導の“対象”、保護の“対象”、教育の“対象”……。そうした考えは往々として「教員側の理屈を生徒に押し付ける」意識を生み出し、結果様々な悲劇が生じてしまう。

関わり方の軸足を、「生徒“に”」ではなく「生徒“が”」に置くことで、多くの問題を解決に導くことができる。「この生徒は問題行動が多く困った生徒だ」といった教師側の上から目線では両者の関係は停滞に陥るが、「この生徒は何を考え、何をしたがっているのか」を一緒に考えていくことで指導の幅が増え、結果として生徒の進路選択も開けてくる。

 

 

②「オン・ザ・フライ・ミーティング」で問題の早期発見と教員間の共有を

 

具体的な事例として挙げられていたのは、

 

a、廊下で生徒と立ち話をする中で、気づきを得る

b、職員室に入って最初に目があった教員に必ず共有する

c、そこから話は広がり、適切な役職に引き継いでいく中で、気づけば話題を提供したaの教員は解放され、また次の指導に携わることができるようになっている

  

といったプロセス。

格式ばった通常のミーティングとは異なり、即興的かつ組織的な「立ち話」を多くこなす、という点が特徴的である。流動的ながらも組織全体での強固な結びつきが生み出され、結果として生徒の抱える問題をより確実に解決に導くことのできる手法である。

「ノットワーキング」とも呼ばれる、教員同士のより強い「knot(結びつき)」に繋がる重要な観点だ。

 

 

③生徒の深い気付きをもたらす反省文の扱い方

 

反省文を無理やり書かせることに意味がないことは少し考えればわかる。ではどうすればよいのか?

 

 紹介されたのは、以下の手順。

 

a、指導を受けたその時点での「正直な気持ち」を書かせる【反省文Ⅰ】

b、指導から少し時間を置いてから「考えたこと」を書かせる【反省文Ⅱ】

c、反省文Ⅰと反省文Ⅱを比較させ、それによって「気付いたこと」を書かせる【反省文Ⅲ】

 

aの段階ではほとんど反省になっていないが、bにおいては自分の行為に一定の意味付けを行っているため、より冷静な視点での反省ができている。ただ、これでもまだ不十分であり、最終的にはcのように、「自分の変化」にまで思いを巡らせることで、真の意味での「反省」となる、という寸法である。

これは普段の授業における「振り返り」にも取り込める考え方だろう。「振り返り」は授業直後の、いわば一番「感情」が入り込んでいる地点で実施されることが多く、これは良くも悪くもその場その時の「熱」に左右されやすい。必要なのはそうした興奮状態も全てひっくるめたありのままの自分を、冷静な視線で振り返ることであり、そこで初めて質の高い「振り返り」や、それに基づく「成長」が得られると言える。

 

 

④素人なりの全力の詰めを行ってから専門家を頼る癖をつける

 

特別支援教育をはじめとして、正直学校内では対処が難しい事例は数多く存在する。

様々な事例を紐解く中で明らかになった「ありがち」は、「専門家の介入を避けようとする」「専門家に丸投げをする」という両極端らしい。

学校が閉鎖的・排他的な一面を持っているのは言わずもがなである。一方で、自分たちで抱えきれなくなった問題を外部の専門家に丸投げすることもよくあるらしいのだが、専門家にしてみればいきなり話を振られても適切なアドバイスは難しく、必ずどこかに現場とのズレが生じてしまうらしい。それも当然である。

 

大事なのは、いち当事者として、「素人」なりにできるだけ考え抜くことであり、その経験を通じることで学校全体の対応力も養われてくる。

 

 

大事なのはやはり「考え方の転換」と「相互の連携」

 

学校や生徒を取り巻く環境は大きく変化している。

そんな状況においては、従来のやり方がそぐわなかったり、効果的ではなくなったりするわけで、今正にそうした局面に我々は直面していると言える。

 

であればこそ、時代に応じた指導観の転換は必要だし、それを全体で共有しながらより強固な理論として統一の見解の元で生徒に関わっていくことが求められてくる。

これは個人的に考えていたことと殆ど一致する傾向であるため、今回の講演は結構勇気を貰った。進むべき道の後押しをしてもらえた気がする。

 

問題は「その理論をどう実行に移していくのか」。これが一筋縄ではいかない。

まだまだ苦悩の日々は続く。

 

 

よくわかるインクルーシブ教育 (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)

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主体的な学びを促すインクルーシブ型学級集団づくり: 教師が変わり子どもが変わる15のコツ

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インクルーシブ教育にも興味がわいてきた。

また入門書でも読んでみよう。