入学式も無事終わり、いよいよ本格的に授業が始まります。
今年は2年と3年の授業を担当することになりました。3年生は古典のみ、2年生は現代文と古典のどちらも受け持ちます。2年生については担任なわけですから、これは望むところです。
なんだかんだで、「受験制度」にすり寄らねばならない
センター試験最後の世代である3年生と、新入試第一世代である2年生を同時に受け持つということで、若干のやりづらさを感じます。
入試制度なんかどこ吹く風で、生徒たちの能力を伸ばすために自由に授業をしたい、というのが本音ですが、やはり進学コースということもあり、そう簡単には割り切れないところ。私立学校ということもあり、生徒や保護者のニーズも無視できないし、渉外的なことを考えれば、ある程度の合格実績も重要になってくる。理想を追い求めることも大事ですが、やはりまずは現実に足を付けていくことが求められているわけであり、なかなかのジレンマを感じるところです。
いや、四の五の難しく考えずに、両立させちまえばいいんですよね。「能力の伸長」と「難関合格」は決して対立概念ではないわけで、十分両立可能なわけですから。
とはいえ、もちろん口で言うほど簡単なことでもなく、まずは自分が力をつけていかねばなりません。勉強の日々はまだまだ続きそうです。
古典の授業スタイルは大きな転換が求められている
世間では「知識偏重」からの「資質・能力重視」の流れがすっかり周知のものとなり、授業のスタイルも全国的に「主体的・対話的で深い学び」を意識した、いわゆる「アクティブラーニング」的なスタイルが主流になりつつあります。(とはいえ、旧態依然な講義スタイルが根強く残っているのもまた事実。現場によっては、もはや「過渡期」とすら呼べない惨状も散見されます。)
学習指導要領も大幅に変わることとなり、いよいよ逃げ場の無い局面へと我々は引きずり込まれることになります。こうした時代の要請に対し、どこまで準備をして、どこまで対応することができるのか。今年は更に忙しくなりそうです。
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正確な読解のためには知識が不可欠、という事実
ご存知の通り、古典と呼ばれる文章は、現代語とは異なる文法や単語によって構成されます。よって、いくら「知識偏重の見直しを」と叫ばれたところで、結局は文法や単語を暗記(ではないにせよ、せめて文章の内容がしっかりと把握できる程度に理解)することは不可欠です。
これを解消するためには全ての文章に対訳を付すことが必要になってきますが、そうなるともはやそれを「古典」と呼んでよいものかが分からなくなってしまいます。
主体的・対話的な学びを促進することで、より一層の生徒の成長が望めますが、そもそも書かれている内容を理解することができなければ、主体的な学びなどありえない、というのもまた一つの事実です。
まずは知識をしっかりと教え込むべきなのか、それとも、そんなやり方は一掃して、生徒の主体的な学びに重きを置くべきなのか。昨年度、1年生の授業で古典文法を扱った際にも、このジレンマには相当悩まされました。
数年前までの私は、生徒たちには文法事項を体系的に教え込み、忘却曲線に従った定期的な課題と小テストによって各々の脳味噌に完全に刻み付けることをしていました。予備校の授業よろしく、「センター試験」で点を取れる授業をデザインしていたのが事実です。
文法を効率よく身につけさせるには、ある程度の主導権をこちらで握った授業をしなければ、逆に効率は悪くなってしまうように感じます。しかし今では、そんな無意味なことをする必要が本当にあるのか、とも考え、常に頭を悩ませています。
これはひとえに私の授業力の無さによるものですが、それを差し引いてもこの「文法をどこまで教え込むのか」という問題はかなり厄介だと思うのです。なかなか納得のいくバランス調整ができていません。
できることはと言えば、ただの「暗記」による「入試のための古典学習」にならないよう、言語文化の面白さや、それを学ぶ意義をことあるたびに唱え続けることぐらいでしょうか。
結局は、「大学入試」がどこまで変わってくれるのか、にかかっている
どうも、「大学入試」に振り回されている感は否めない。
センター試験については、「大学入試共通テスト」へと刷新されることが決まっているものの、これであらゆる問題が解決されるかというと、どうもそんなようには思えない。
いや、共通テストはまだいいとして、問題は各大学が準備する、いわゆる「個別試験」がどこまでこうした時代の流れに寄せてくるのか、ということです。
せっかくこちら側が「知識偏重」から脱し、時代の要請に応じることのできる人材を育成すべく生徒たちの能力育成に主眼を置いて授業を組み立てたところで、肝心の大学側が旧態依然の「知識偏重」を続けてしまえば、それはあまりにも無慈悲であるというものです。
現高校2年生が受験生となった時に、果たしてその辺りがどうなるのかは本当に蓋を開けてみなければ分かりません。
先の見えないトンネルを、少しでも正確に抜けきることができるよう、手探りでの授業はまだまだ続いていきそうです。
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