プロ野球が開幕しました。
桜の開花とプロ野球の開幕のニュースは、なんだか春が来たって感じでワクワクしますよね。
夏には高校野球も山場を迎えます。今年はどんなドラマが待っているのやら。
【目次】
野球とは無縁の少年時代
とか言いながら、幼少期は特に野球は好きではありませんでした。父親がテレビの中継を見る関係で好きな番組が見れなかったこともあり、むしろ嫌いですらあったかもしれません。加えて、基本的に運動が苦手な私はバットをボールにかすらせることなどできずに恥をかくことも多く、体育の授業で野球をする時などは結構憂鬱だったのを覚えています。
そんなこんなで、学生時代には正直そこまで興味を持っていなかった私が、なぜか社会人になってから面白さに目覚めてしまったというわけで、これは自分自身のことながら結構な謎です。
戦略の面白さ
今ではそれなりの野球好きなのですが、一般の野球ファンとは少し違っていて、私は特定の選手の活躍や、球団の勝ち負けについてはほとんど興味がありません。
どんなスターが活躍したとか、どんな球団が連覇を成し遂げたとか、そんなことはどうでもいいと感じています。現に、プロ野球のテレビ中継を見ても、選手の顔と名前はほぼ一致しませんし、名前をよく聞く選手でも、どの球団に所属しているのかさえ正直よく分かっていません。
私が野球を魅力的に感じるのは、ひとえにその試合中に繰り広げられるあらゆる戦略の面白さです。
他のスポーツと異なり、時間が止まることが多い野球は、勝負のポイントが見えやすいわけです。一見、打者と投手の一対一の駆け引きに見えて、その裏には刻々と変化する状況や打者の特性と投手の相性などに応じて配球をコントロールする捕手がいる。グラウンド全体を俯瞰する立場から、あらゆるデータに基づいて采配を振るう監督やコーチがいる。それら全てがまさに文字通り、選手の一挙手一投足を魅力あるものへと彩っているわけです。
互いの知性がしのぎを削りあう、ボードゲームのような一進一退の攻防。野球に見え隠れするそんな部分に大きな魅力を感じるというわけです。
大人になってからそういう見方を知った私は、すっかり野球の面白さに惹かれてしまいました。
野球の魅力が凝縮された作品たち
今述べたように、私が野球に求めるのは、「力 対 力」といった、真っ向勝負の側面ではなく、「頭脳 対 頭脳」の部分にあります。ただの筋肉自慢の方々のハッスルにはそこまで興味がありません(失礼)。
私をそんな境地に導いてくれたのは、次に紹介する2作品。どちらマンガです。
①「ONE OUTS」(甲斐谷忍)
ONE OUTS 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 甲斐谷忍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/02/19
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一打席勝負の野球賭博「ワンナウツ」で無敗を誇る、天才投手「渡久地東亜」。そんな男がとある理由からプロ野球界へ転身し、最弱球団「リカオンズ」の優勝に向けあらゆる球団をなぎ倒してゆく。
そんな少し変わった設定の本作。作者自らが「野球版『アカギ』」を自称するだけあって、非常に高度な頭脳戦が中核に据えられた読み応えのある作品です。
この作者の作品としては、「LIAR GAME(ライアーゲーム)」の方が有名でしょう。そんなライアーゲームの要素を含んだ野球漫画、と考えていただければ、少しは内容もピンとくるかも知れません。
LIAR GAME 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 甲斐谷忍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: Kindle版
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ともかく主人公渡久地の快刀乱麻の活躍と毒舌っぷりが痛快で、読んでいて気持ちが良いです。
作中では「勝負とは何か」「チームとは何か」「組織とは何か」といったテーマについても掘り下げられており、考えさせられる部分も非常に多い。「プロ野球」が題材のため、なかなか手を出しづらい雰囲気がありますが、野球のルールがある程度分かるならば読んでおいて損は無いはず。
②「ラストイニング」(原作:神尾龍、監修:加藤潔、作画:中原裕)
こちらは高校野球が題材の野球漫画。ただし、主人公は「監督」。
とあることがきっかけで母校の野球部の監督となった鳩ヶ谷圭介は、データを重視する独自の野球理論をひっさげて、落ちぶれた名門「彩珠学院高校野球部」を甲子園出場へと向け立て直してゆく。
高校野球漫画と言えば「努力」と「根性」をベースに置いた、いわゆる「熱血」がオーソドックスですが、この作品は少し毛色が異なります。主人公鳩ヶ谷が何よりもまず重視するのは、データ分析に基づく理論を駆使した末の勝利。作中で「勝利至上主義」と揶揄されることもあるわけですが、単純に機械的な勝利を欲しているわけでもなく、やはりそこには非常に熱い人間ドラマが繰り広げられています。そんな鳩ヶ谷監督の「静かな熱さ」にいつの間にか感情移入をしてしまっています。
この作品を読むと、もう野球の試合を「なんとなく」では観れなくなります。
選手同士で交わされる心理戦だけでなく、ベンチにおける監督の苦悩などが丁寧に描かれており、幅広く、深い視点から野球を観ることができるようになるため、むしろ選手側の人間が読んでもためになるのかもしれません。
この夏の野球観戦のお供に、ぜひ
この2作品との出会いが、私の野球とのかかわり方を大きく変えてくれたといっても過言ではありません。教師としての仕事に対する考え方にも刺激を与えてくれるような場面も多く、実際に、これらの漫画に描かれている内容を生徒に語ったことも数多くあります。
どちらも名作として自信をもってお勧めできる傑作。毎年この時期になると読み直しますが、もう何度読んだか分からない程です。
このシーズン中に、これらの作品は個別で記事をまとめようと思います。